この世が終わり、犬が喋るだす。

少年と犬

西暦2024年は、気づけば来年だった。
かなり高い確率で、あなたが目にする未来。もう時間がなく、緊急予言初公開。
2023年5月19日(金) シネマート新宿ほか全国順次公開
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INTRODUCTION
TVシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」(64-68)や「アウター・リミッツ」(63-64)などの脚本家としても活躍したアメリカSF作家の鬼才ハーラン・エリスン。彼が1969年ネビュラ賞・中長編小説部門賞を受賞した同名原作を、『ワイルドバンチ』(69)や『砂漠の流れ者』(70)等のサム・ペキンパー監督作の常連俳優、L・Q・ジョーンズが1975年に映画化。
見渡す限り地平線の荒野、人や食料は枯渇し尽くした世界終焉後の悲惨世界を独特のトーンで描写。あまりに異様で絶望感漂う内容ながら不思議と後味は良く、1976年のサターン賞・最優秀男優賞とヒューゴー賞・最優秀映像部門賞を受賞。
「特捜刑事マイアミ・バイス」(84-89)のドン・ジョンソンの出世作であり、ドアーズのレイ・マンザレクが音楽の一部を担当。『マッドマックス』シリーズ(79-)に影響を与えたとも言われており、ゲーム「Fallout4」の元ネタのひとつにもなっているなど、現在に至るまで存在感を持ちながらも日本では劇場未公開に終わっていた傑作である。
主人公の少年とテレパシーを介して【犬が喋る】という画期的設定により、愛らしい見た目と渋い声で発せられる時にブラックな発言が得も言われぬギャップとユーモアを生む。
戦争、環境汚染、遺伝子変異、管理社会、ロボットたちの暴走、偽りのユートピア     舞台である西暦2024年を目前に控え、決して他人事では無くなってしまったひとつの人類への予言的一作が、約50年前の世界からようやく日本劇場初公開となる。未来に備え、我々がスクリーンと現実世界という名の荒野に見るのは果たして絶望か勇気か。
STORY
西暦2024年、第4次世界大戦により地球上は荒廃、
遺伝子変異により女性は生まれなくなり、
テレパシーで喋る犬と少年は共に行動、
少年は地下世界に向かうが、
そこではお仕置き臨時会議が開催されていた。
STAFF
原作
ハーラン・エリスン
1934年にアメリカ・オハイオ州出身。偉大なアメリカ人短編小説家の1人。70冊以上の本、1700以上の物語を残したほか、エッセイ、新聞コラムなども執筆し、TVドラマや映画の脚本も手掛けた。ヒューゴー賞は28回ノミネート、11回受賞。ネビュラ賞は17回ノミネート、4回受賞、ローカス賞は50回ノミネート、17回受賞。ほか、受賞歴は多数。また過激な言動により喧嘩と逸話も多数。1969年、当時飼っていた犬のアブをモデルに執筆した「少年と犬」がイギリスのSF雑誌「ニュー・ワールズ」に掲載され、翌年のネビュラ賞・中長編小説部門を受賞。1975年にL・Q・ジョーンズが監督をつとめ映画『少年と犬』が公開、本作は1976年のサターン賞・最優秀男優賞とヒューゴー賞・最優秀映像部門賞を受賞。
監督
L・Q・ジョーンズ
1927年、アメリカ・テキサス州出身。100本以上の映画出演作、600本以上のTV出演作を持つ性格俳優。大学卒業後、スタンダップコメディアンとして活躍。1955年、ラオール・ウォルシュ監督『愛欲と戦場』で映画デビューを果たし、その役名を芸名とする。『昼下りの決斗』(62)を皮切りにサム・ペキンパー監督作の常連となり、『ダンディー少佐』(65)、『ワイルドバンチ』(69)、『砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード』(70)、『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(73)に出演。ほか、エルヴィス・プレスリー主演『ステイ・アウェイ・ジョー』(68)、クリント・イーストウッド主演『奴らを高く吊るせ!』(68)、チャック・ノリス主演『テキサスSWAT』(83)、ロバート・デ・ニーロ主演『カジノ』(95)など数多くの出演作にて強い印象を残している。映画監督としては、1964年に第1作目となる西部劇『The Devil's Bedroom』を発表、続く2作目となった『少年と犬』(75)が高く評価され1976年ヒューゴー賞・最優秀映像部門を受賞した。2022年7月に死去。
CAST
ドン・ジョンソン
ヴィック役
1949年、アメリカ・ミズーリ州出身。異色西部劇『ウェスタン・ロック ザカライヤ』(71)、青春ドラマ『青い接触』(73)に続き出演したのが主演作『少年と犬』である。女性が稀有な存在であり性欲を持て余し荒野を彷徨うという野性的かつ純真さを持ち併せた少年を好演した事が評価され、1976年サターン賞・最優秀男優賞を受賞。その後はTV映画でも活躍を進めていき、TVシリーズ「特捜刑事マイアミ・バイス」(84-89)のソニー・クロケット役でブレイクし、第44回ゴールデン・グローブ賞 ドラマ部門男優賞を受賞。TVシリーズ「刑事ナッシュ・ブリッジス」(96-01)でふたたび人気を博し、近年は『マチェーテ』(10)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)、『ブルータル・ジャスティス』(18)、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(19)などで円熟したワイルドさを示している\
スザンヌ・ベントン
クイラ・ジューン・ホームズ役
1948年、カナダ・オンタリオ州出身。L・Q・ジョーンズも多数出演したTV西部劇シリーズ「バージニアン」の「A Bad Place to Die」(67)(ハリソン・フォードも出演)や「刑事コロンボ」の第1話「殺人処方箋」(68)などで経験を積み、映画ではロバート・アルトマン監督『雨にぬれた舗道』(69)、『濡れた欲望』(70)に出演。『少年と犬』ではその美貌と狡猾さを駆使して生き抜かんとする、ある種の逞しさを表現。『新マニアック』(82)を最後に女優を引退。
ジェイソン・ロバーズ
ルー・クラドック役
1922年、アメリカ・イリノイ州出身。演劇そして映画で多くの功績を残した演技派。父親ジェイソン・ロバーズ・Srも俳優である。『旅』(59)で長編映画デビュー。培ってきた演技力のもと、大役に次々と抜擢。コメディ、歴史ものなど幅広く活躍。西部劇の傑作への出演も多く、その一部にヘンリー・フォンダ主演『テキサスの五人の仲間』(66)、ロジャー・コーマン監督『聖バレンタインの虐殺/マシンガン・シティ』(67)の主人公アル・カポネ役、『墓石と決闘』(67)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(68)、『ジュリアス・シーザー』(70)、『トラ・トラ・トラ!』(70)、『ジョニーは戦場へ行った』(71)、『モルグ街の殺人』(71)などがある。『砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード』と『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』でL・Q・ジョーンズと共演。『少年と犬』では地下世界の権力者を狂気を以て表現し恐ろしさを体現。映画出演の傍ら舞台出演も続け、8度トニー賞にノミネートされ、3度受賞。その翌年、その実績が花開き『大統領の陰謀』(76)で第49回アカデミー賞 助演男優賞を、さらに続けて『ジュリア』(77)でも第50回アカデミー賞にて助演男優賞を受賞。80年代に入るとTV映画にも多く出演し、晩年は『フィラデルフィア』(93)、『マグノリア』(99)などで重厚な存在感を示した。2000年に死去。
ティム・マッキンタイア
ブラッドの声役/音楽
1944年、アメリカ・モンタナ州出身。俳優でありミュージシャン。『シェナンドー河』(65)、『空爆特攻隊』(69)、『くちづけ』(69)に出演したのちに『少年と犬』でブラッドの声と音楽の一部を担当。テレパシーで喋る犬という作品の肝である重役は、当初、1930年代にギャング映画で名を馳せ引退状態だったジェームズ・キャグニーが役を希望していたが、L・Q・ジョーンズは"ギャグニーが犬の声を演じている"という事が全面に出てしまうと思ったためこれを断り、持ち前の美声であったマッキンタイアに白羽の矢が立った。これが功を奏し、渋さと毒気とギャップのあるキャラクターが誕生。オープニングとエンディングに流れる楽曲も自身が歌唱。その後も『激走!5000キロ』(76)、『クワイヤボーイズ』(77)、『アメリカン・ホット・ワックス アラン・フリード物語』(78)、『ブルベイカー』(80)、ほかTVコマーシャルのナレーションや音楽活動でもその魅力的な声を生かして活躍するも、1986年に41歳の若さで死去。
COMMENT
敬称略/順不同
後に『マッドマックス2』が決定打となった
ポスト・アポカリプスものの先駆けとして
語られることが多いこの『少年と犬』だが、
一方で実は、後半に登場する
「滑稽なほど歪んだノスタルジーで出来たファッショな“新生”国家」
との鮮やかな対比こそ、
ひょっとしたらキモだし(『五分後の世界』や『侍女の物語』なども重なる)、
なんなら今の目で観て
タイムリーに感じられるあたりだと思う。
残念ながら……。
宇多丸RHYMESTER
ハーラン・エリスンの原作を読んでから40年間、
待ち焦がれた伝説がついに世に放たれる日が来た。
ヴィックが真の愛を見出すラブストーリーに涙せよ。
柳下毅一郎映画評論家
少年と犬との絆は、
終末期の地獄を生き抜こうとすることがなにを意味するかを、
教えてくれる。
だが、ここに描かれた弱肉強食ギリギリの世界は、
おぞましさと愉快な哀しみが共存する我々の世界と、
どこかでつながっているだろう。
70年代の作品とはとても思えない、
現代的で予言的な物語だ。文明人が隠し持つ普遍の構造が、
そこにある。
小谷真理SF&ファンタジー評論家
荒廃した未来、愚かな人類、何故か普通に喋ってる犬……。
これが来年の設定とは思えない、
荒涼とした世界でひたすら食べ物と女を探す主人公。
昔のSF感あふれる展開と異様に芸達者な犬。
そして衝撃のラストには本当に今年一番驚きました。
そんなオチ、アリ……!?
服部昇大漫画家
相棒犬ブラッド先輩、
どんな時代でも犬と人はやっぱり最高のパートナーなんですね!
先輩のワンダフルな名演技に脱帽です。
世界が荒廃した地獄のような状況でも、
ヘソ天で寝られる先輩のようなカッケー男に僕もなりたい。
あと、先輩が食べてたポップコーンがめちゃくちゃおいしそうでした!
それにしても、なんで人間は戦争をやめないんですかね?
(以上、モコゾウがテレパシーで伝えてきた感想を育ての母が代筆しました)
モコゾウ