1960年7月11日生まれ。イラン・ミアネ出身の映画監督、脚本家、映画編集者。高校卒業後2年間の兵役を経て首都テヘランにある国立メディア大学で映画の製作や演出を学ぶ。その後、TV番組などで短編映画を制作した後、1994年にかねてよりファンだったアッバス・キアロスタミに連絡を入れ、その2日後に『オリーブの林をぬけて』の助監督という地位を得る。翌年、キアロスタミが脚本を務めた『白い風船』(95)で長編映画監督デビュー。第48回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞する。同作は、カンヌで初めて受賞したイラン映画である。その後も、『鏡』(97)で第50回ロカルノ国際映画祭金豹賞、『チャドルと生きる』(00)で第57回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、『オフサイド・ガールズ』(06)で第56回ベルリン国際映画祭銀熊賞ほか、数々の賞を獲得している。
イランで過ごす人々の生活に目を向けた人道的な視点が作品の特徴で、子どもや貧困層、女性の苦難に焦点を当てた作風で知られている。
イランの女性に対する厳しい社会的抑圧をリアルに描いた『チャドルと生きる』、サッカーのイラン代表を応援したい女性たちがスタジアムへ潜り込もうと奮闘する(当時イランでは女性がスタジアムでスポーツ観戦することが禁止されていた)『オフサイド・ガールズ』の2作でイラン政府と数年間対立。2010年3月に妻、娘、15人の友人と共に逮捕され、後にイラン政府に対するプロパガンダで起訴される。このイラン国内でのパナヒに対する刑罰に、世界中の映画製作者、映画団体、人権団体が猛抗議。しかし2010年12月、6年の懲役刑と、20年間の映画制作を禁止宣告される。控訴の結果を待つ間に撮った、ビデオ日記の形で綴られるドキュメンタリー長編映画『これは映画ではない』(11)は、撮影データを入れたUSBをケーキの中に忍ばせイランから運び出し、2011年の第64回カンヌ国際映画祭でプレミア上映され絶賛された。
引き続き、政府に映画制作を禁止されているはずだが、その後も精力的に撮り続けており、2013年2月、第63回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で盟友カンボジヤ・パルトヴィと共同監督で撮った『閉ざされたカーテン』(13)が上映され、銀熊(脚本)賞を受賞した。その他、『人生タクシー』(15)は、2015年2月に開催された第65回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映され、映画祭の最優秀作品に贈られる金熊賞を受賞。『ある女優の不在』(18)は、第71回カンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞。母国イランでは上映できないが、海外の映画評論家や批評家らからは熱い支持を受け続けている。