夏のバカンスでフランスからスペインにやってきたある家族。
母アネの子どものココ(バスク地方では“坊や(坊主)”を意味する)は、男性的な名前“アイトール”と呼ばれること(※1) に抵抗感を示すなど、自身の性をめぐって(※2) 周囲からの扱いに困惑し、悩み心を閉ざしていた。
叔母が営む養蜂場でミツバチの生態を知ったココは、ハチやバスク地方の豊かな自然に触れることで心をほどいていく。
ある日、自分の信仰を貫いた聖ルチアのことを知り、ココもそのように生きたいという思いが強くなっていくのだが……。
※1 自分の名前を変更したトランスジェンダーやノンバイナリー、ジェンダークィアといった人々について、他者が話したり、本人に呼びかけたりするとき、出生時につけられた名前を使うことをデッドネーミングと言います。一般的に、名前からその人のジェンダーが推測される習慣があります。本作で主人公のココは、男性的な名前・あだ名で「呼ばないでほしい」と訴えますが、呼んでほしい名前が定まらなくても、性別違和を訴える相手が傷つかないよう配慮するのが望ましいでしょう。
※2 子どもに限らず、性別違和を抱いたり訴えたりする場合、トランスジェンダーだけでなく、ジェンダー・ノンコンフォーミングである場合もあります。これは、本人が認識しているジェンダー・アイデンティティやジェンダー表現(髪の毛長さ、服装、振る舞いなど)が、社会から期待されている「女らしい」「男らしい」といった規範が一致しない状態を指します。ジェンダー・ノンコンフォーミングの人には、トランスだけでなく、出生時に割り当てられた性別から移行しないシスジェンダーにも存在します。