About The Movie

映画を愛する君へ

映画の誕生から現在に至るまでの名作の歴史と映画の魅力を語り尽くしたシネマ・エッセイ。
デプレシャンの日本初公開作『そして僕は恋をする』(96)でマチュー・アマルリックが演じた役ポール・デダリュスの一代記の形をとり、デプレシャンの分身ともいえるポールの映画人生を描く。

祖母に連れられて初めて映画館を訪れた6歳の時。14歳の時に16歳と偽って映画館に潜りこんだこと。
学生時代の映画部での上映会。22歳の時、大学で映画を学んだ記憶。
30歳になり人生の岐路に立つポールは、映画館でトリュフォーの『大人は判ってくれない』(59)を観て、評論家から映画監督に転身しようと決意した。

デプレシャンの自伝的な作品でありながら、誰もが共感し楽しめる物語。これは映画と映画館へのラブレターでもある。
動画配信サイトでコンテンツを消費するようになり、映画館離れが叫ばれる時代だからこそ胸に刻んでおきたい映画のレクイエム。
日本を含む世界各地の個性的な映画館も登場。
一般の観客が自らの映画体験を語るインタビューも交えたドラマとドキュメンタリーのハイブリッドな構成。
尽きることのない映画への愛に溢れた、映画好きにはたまらない一篇。

director

Arnaud Desplechin

アルノー・デプレシャン

監督・脚本

1960年、フランス北部の街ルーべ生まれ。パリ第3大学で映画を学んだのち国立映画学校ラ・フェミスで演出を学ぶ。卒業後の1991年、『二十歳の死』で第3回プルミエ・プラン映画祭ヨーロッパ短編映画脚本賞とジャン・ヴィゴ賞を受賞し、一気に注目を浴びる。1992年、『魂を救え!』で、第18回セザール賞 新人監督賞と最優秀脚本賞、第45回カンヌ国際映画祭 パルムドールにノミネート。1996年に、『そして僕は恋をする』で世界的な人気を獲得し、マチュー・アマルリックが第22回セザール賞 有望若手男優賞に輝いた。2004年、『キングス&クイーン』で第61回ヴェネチア映画祭 コンペティション部門にノミネート。主役を演じたマチュー・アマルリックに第30回セザール賞 最優秀男優賞をもたらした。2008年、『クリスマス・ストーリー』で第61回カンヌ映画祭に正式出品。第35回セザール賞で監督賞を含む9部門にノミネート。2022年、『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』で第75回カンヌ国際映画祭 パルムドールにノミネート。現在もフランス映画界を代表する映画監督として活躍中。

director

Louis Birman

ルイ・バーマン

ポール・デダリュス(6歳)役

Milo Machado-Graner

ミロ・マシャド・グラネール

ポール・デダリュス(14歳)役

2008年、フランス生まれ。今、最も注目されている若手俳優。2021年TVシリーズ「En thérapie」で俳優デビュー。同年、オリヴィエ・ブルドーの小説「ボージャングルを待ちながら」を映画化した『En attendant Bonjangles』に出演。2022年に、フランスの人気テレビシリーズ「Alex Hugo」、2023年には、Netflix製作『ヒューマニティ通り8番地』に出演。さらに、第96回アカデミー賞 最優秀脚本賞を受賞した『落下の解剖学』(23)で視覚障害のある少年という難役を演じ、第29回クリティック・チョイス・アワード 最優秀新人俳優賞、第49回セザール賞 有望若手男優賞にノミネートされた。

Sam Chemoul

サム・シェムール

ポール・デダリュス(22歳)役

2000年、フランスのパリ生まれ。フランク・デュボスク監督の『パリ、嘘つきな恋』(18)、フランスで400万人を動員したマチュー・アマルリック主演『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(18)、マット・デイモンやアダム・ドライバーなど豪華キャストが出演するリドリー・スコット監督『最後の決闘裁判』(21)、『ジュリア』(22)などに出演。

Salif Ciss

サリフ・シセ

ポール・デダリュス(30歳)役

18歳の時に演劇のワークショップに参加したことをきっかけに俳優を目指す。アルノー・デプレシャン監督の作品は、『あの頃エッフェル塔の下で』(15)に続いて2作目の出演。2020年、ギョーム・ブラック監督の『みんなのヴァカンス』で主演を務めたことで知られる。2023年には、第76回カンヌ国際映画祭カンヌ・プルミエール部門に選出、第49回セザール賞 最優秀脚色賞を受賞した『L’amour et les forêts』に出演。テレビシリーズ「Lupin」に出演。さらに、2020年にはTVシリーズ「Couronnes」で脚本家デビュー、2023年には短編映画『Alli市』で監督デビューし、俳優にとどまらず幅広く活躍中。

Françoise Lebrun

フランソワーズ・ルブラン

祖母役

1944年、フランス生まれ。第26回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞と国際連盟批評家連盟賞を受賞した映画史に残る傑作、ジャン・ユスターシュ監督の『ママと娼婦』(73)で娼婦のヴェロニカ役を演じたことで広く知られる。同じくジャン・ユスターシュ監督『ペサックの薔薇の乙女’79』(68)では脚本を務める。ほか、アルノー・デプレシャン監督『あの頃エッフェル塔の下で』(15)、ウニー・ルコント監督『めぐりあう日』(16)など、50年以上に渡って多くの作品に出演。2021年には、ギャスパー・ノエ監督の『VORTEX/ヴォルテックス』でダリオ・アルジェントと認知症を患い年老いていく夫婦役を演じ、第28回リュミエール賞 最優秀女優賞にノミネートされた。

Micha Lescot

ミシャ・レスコー

パリ第3大学教授(パスカル・カネ)役

1974年、フランス生まれ。第75回カンヌ映画祭 コンペティション部門に出品されたバレリア・ブルーニ・テデスキ監督『フォーエヴァー・ヤング』(22)では、第48回セザール賞 助演男優賞にノミネート。その他、『めぐりあう日』(15)、ミシェル・アザナヴィシウス監督『グッバイ・ゴダール!』(17)、『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』(23)などに出演。

Shoshana Felman

ショシャナ・フェルマン

文芸評論家(ショシャナ・フェルマン本人)

1942年生まれの文芸評論家。 文芸批評から哲学、精神分析、フェミニズム、ホロコーストなどについて研究している。主な著書にホロコーストについて論じた「ラカンと洞察の冒険:現代文化における精神分析」や「声の回帰:映画『ショアー』と「証言」の時代」、「語る身体のスキャンダル:ドン・ジュアンとオースティンあるいは二言語による誘惑」、「女が読むとき女が書くとき:自伝的新フェミニズム批評」、「狂気と文学的事象」がある。

Kent Jones

ケント・ジョーンズ

アメリカの友人(ケント・ジョーンズ本人)

1957年、アメリカ生まれの映画批評家、映画製作者。マギル大学に入学ののち、ニューヨーク大学に転学し映画製作を学ぶ。フランス最古の映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」の特派員となり批評家としてのキャリアを積み、のちに「フィルム・コメント」の編集長になる。1990年代にはマーティン・スコセッシ監督のアシスタントを務め、映画監督エリア・ガザンを描いたドキュメンタリー映画『A Letter to Eria』(10)ではスコセッシと共同監督を務めるなど、彼が映画史を扱ったドキュメンタリー作品に多く携わる。2013年、アルノー・デプレシャン監督の『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』で、共同脚本家を務める。さらに、2015年、『ヒッチコック/トリュフォー』で監督デビュー。2018年に、『Diane』で長編映画監督デビュー。その他、ニューヨークのリンカーン・センターやフィルム・フォーラムで映画プログラマーを務めるなど、活動は多岐に渡る。

Mathieu Amalric

マチュー・アマルリック

映画監督(マチュー・アマルリック本人)・ナレーション

1965年、フランスのパリ近郊ヌイイ=シュル=セーヌ生まれ。1984年、家族ぐるみの友人であったオタール・イオセリアーニ監督『月の寵児たち』で映画俳優デビュー。その後、アルノー・デプレシャン監督と出会い、1992年『魂を救え!』に出演。続けて、1996年に『そして僕は恋をする』の主人公ポール・デダリュスを演じ、第22回セザール賞 有望若手男優賞に輝いた。その後、デプレシャン監督『キングス&クイーン』(04)とジュリアン・シュナーベル監督『潜水服は蝶の夢を見る』(07)でセザール賞主演男優賞を2度受賞。スティーヴン・スピルバーグ監督『ミュンヘン』(05)、『007/慰めの報酬』(08)、ウェス・アンダーソン監督『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)、『フレンチ・ディスパッチ』(21)、黒沢清監督『蛇の道』(24)など多くの作品に出演し、フランス映画にとどまらず国際的に活躍中。さらに、監督としても知られ、2010年には、『さすらいの女神たち』で第63回カンヌ国際映画祭 監督賞と国際映画批評家連盟賞を受賞。2017年には、『バルバラ セーヌの黒いバラ』(17)で、第70回カンヌ国際映画祭 ある視点部門ポエティックストーリー賞を受賞。

Comment

(五十音順)

伊藤さとり(映画パーソナリティ・映画評論家)

初めて映画へしっかりと意識を向けた日のことは忘れない。
『風と共に去りぬ』のラスト、「ここで“明日には明日の風が吹く”って言うの」と母が言った。
詩的なセリフを映画から知った。
観たこともない地を映画から知った。
恋の感覚を映画から知った。
感情を音楽で綴ることを映画から知った。
そんな懐かしい記憶がこの映画から名作と共に蘇ってきた。

▼幼少期に影響を受けた映画
『シンデレラ』(76)、『第三の男』(49)、『カサブランカ』(42)

川口敦子(映画評論家)

映画への、映画をみることへの、愛をめぐるデプレシャンのシネマ・エッセイは、監督自身の“私の映画史”でもあり、あるいはまた例の“マドレーヌの欠片”のように映画に向かう私たち観客個々の記憶の喚起装置ともなっていく。
いくつもの形式を溌剌と健やかな野心に満ちて束ねあわせる多面体の宇宙、その大きさ、奥行、親密さを噛みしめたい!

▼幼少期に影響を受けた映画
『秋刀魚の味』(62)、『あいつばかりが何故もてる』(62)

黒沢清(映画監督)

映画とは現実を輝かせること…その通りだと切実に思う。よくぞ言ってくれました

▼影響を受けた映画
『砂漠の流れ者』(70)

小島秀夫(ゲームクリエイター)

映画の歴史と共に、アルノー・デプレシャン監督の“映画愛”が語られる。
“映画好き”は、誰もが共感し、涙するだろう。そこで語られる映画たちと、自分の映画体験と記憶に。 一方、YouTubeやサブスク世代は、全く別の感想を抱くはずだ。本作は、“映画愛”を試す“リトマス試験紙”だ。
あなたはどうだろう?試してみるがいい。自分の“映画愛”を。

▼影響を受けた映画
『顔のない眼』(60)

佐津川愛美(女優)

難しいことは抜きにして「映画館で映画を観ることが好き」という私の事実を肯定してもらえたようでした。
今まで自分が観て来た作品から受け取った感情が愛おしくなると同時に、あとどれだけの未知の気持ちを教えてもらえるのだろう、どんな映画と出会えるのだろうとスクリーンの前で静かに心震えました。 少年の瞳に映る映画というものに、計り知れない魅力が詰まっている奇跡に大きな拍手を。

▼幼少期に影響を受けた映画
『耳をすませば』(95)

竹中直人

なんてロマンチック!映画がまだフィルムだった時代の壮大なロマンに酔いしれる!スクリーンに映し出された映画スターと映画監督たち!
【映画】と言う極上の夢に、こころが静かに踊り、柔らかく震えた。

▼影響を受けた映画
『鉄道員』(56)、『刑事』(59)、『007/ドクター・ノオ』(62)、『007/危機一発』(63)

秦早穗子(映画評論家)

大勢の人たちと一緒にいるのに、独りぼっち。だから、自由という不思議な感覚。それを体験させてくれる映画館。 アルノー・デプレシャンは、そんな幸せを呼び覚ましながら、映画の旅へと誘う。
映画は、ひとりの人間の生きてきた人生と歴史に、大切な関わりを持っているのを暗示する。

▼幼少期に影響を受けた映画
『民族の祭典』(38)、『陸軍』(44、『自転車泥棒』(48)

樋口尚文(映画評論家・映画監督)

トム・ウェイツ『Ruby's Arm』(ゴダール『カルメンという名の女』だよ)に痺れながら『ターミネーター』にもドキドキしてた私にはシンクロ率100%の包容力に満ちたシネフィル断章。
映画と映画館になぜかくも魅せられるのか?その答えがここにある!

▼影響を受けた映画
『戦場のメリークリスマス』(83)

深田晃司(映画監督)

歴史とは個の思いの集積であること、アルノー・デプレシャン監督しかり、この映画に映るひとりひとり、そして客席でスクリーンを見つめるすべての人が映画史の担い手であることを突きつけてくる。歪つまでの熱量で挿入されるのが『SHOAH』であるのは偶然ではないのだろう。
映画とは何か、歴史とは何か、現実とは? そんな映画だったと思います。

▼幼少期に影響を受けた映画
『天空の城ラピュタ』(86)

宮代大嗣(映画批評)

デプレシャンの最高傑作!『映画を愛する君へ』は、映画館の暗闇に身を沈め、スクリーンの光と影に恋をすることが“旅”によく似ていることを思い出させてくれる。そして劇場の幕が下りたとき、私たち自身の旅が始まる。デプレシャンは誰に対しても分け隔てなく座席を用意している。ここがあなたの席だと。あなただけのために用意された席だと。ここからあなたの人生の旅が、再び、何度でも、始まるのだと。

▼幼少期に影響を受けた映画
『バットマン』(89)

山崎まどか(コラムニスト)

自分が子供や若いときに映画館で観た映画、家族が集まるリビングのテレビで流れていた映画、誰かと映画を観に行った帰りにカフェやバーで語り合ったこと。デプレシャンの個人的な映画史に呼応して、スクリーンの記憶と共に追憶が押し寄せてくる。
なんて豊かな映像体験なんだろう。

▼幼少期に影響を受けた映画
『ダウンタウン物語』(76)

リム・カーワイ(映画監督)

孤高の巨匠ベルイマン、ドライヤー、ブレッソン等の映画から、ホロコーストをテーマとした9時間27分の『SHOAH ショア』を情熱的に語り、ラブコメ『ノッティングヒルの恋人』やSFアクション『ターミネーター2』、『エイリアン2』などエンタメ作品に至るまで映画愛を隠さず告白する。
これは間違いなく、自分の映画人生を振り返ったデプレシャン監督が映画を愛する君への入魂のラブレターだ。
そして映画館で少しでもあの神秘的な美しい体験に触れた人は、きっとこの映画を一生の宝にするだろう。

▼幼少期に影響を受けた映画
マイケル・ホイ、ジャッキー・チェン、映画会社ショウ・ブラザーズのカンフー映画、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)

渡辺真起子(俳優)

暗い空間に浮かび上がる大きな窓。小さな家の中で、学校で、息苦しく生きていた孤独な私はその窓からいろいろな世界を知った。おかげで自分の生きている時間とも向き合えるようになった。他者と共感する喜びを知り、自分が独りぼっちではないことも知った。 そしてそれを自分の仕事(演者)としていまに至る。
デプレシャン監督は同世代といえば同世代。作品の中に出てくるラインナップには親しみがあり、いろいろな思い出が湧き上がり、未来へと思いを馳せる。写真が連なり映画になるように、陰影を持つ印象深い時が重なり合い、時間となり連なり、映画館のスクリーンで奥行きを持ちはじめ、私の人生の中に残っていく。
デプレシャンの映画へのラブレターは素直で愛しい。

▼オールタイムベスト映画
『クリスマス・ストーリー』(08)
▼幼少期に影響を受けた映画
『赤い風船』(56)、『ションベン・ライダー』(83)、『マッチ工場の少女』(90)

(都道府県順)

新宿シネマカリテ(スタッフK)

映画に対しての情熱が溢れている。
劇中に綴られていく言葉は監督の映画へのラブレターかもしれない。

▼幼少期に影響を受けた映画
『天空の城ラピュタ』(86)

新宿シネマカリテ(スタッフY)

スクリーンから溢れ出る、映画愛へのメモリー。
知っているようで意外と知らない、映画にまつわるエトセトラ。
かけがえのない映画体験の数々が走馬灯のようによみがえり、鑑賞後はきっと誰かと語り合わずにはいられない。

▼幼少期に影響を受けた映画
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)、『コンタクト』(97)、『レインマン』(88)

新宿シネマカリテ(スタッフS)

スクリーンへと向けられる眼差し、映画を語る人々の眼差しが素敵です。
私が劇場で働いている理由の一つがこの中にありました。

▼幼少期に影響を受けた映画
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)

新宿シネマカリテ(スタッフK)

映画に刻まれた「記憶」。
社会情勢や土地の風景、人々の暮らしと心の内。
僕らは映画館の暗闇でその記憶に触れる。
銀幕を通して追体験し、委ねられる。
そうして僕を造った映画たちとの出会いの瞬間、傷みもトキメキも感動も、再び蘇る。
これは映画に魅せられたことのある全ての人の物語だ。

▼幼少期に影響を受けた映画
『二十四の瞳』(54)

ヒューマントラストシネマ渋谷(営業 植村)

映画を通じて人々の人生を覗かせてもらっていると思っていたけれど、実は自分と向き合う時間になっていたのかもしれない、、、
登場人物たちの好きを知ることで、自分の好きを再確認できた気がしました。

▼幼少期に影響を受けた映画
『パコと魔法の絵本』(08)

アップリンク吉祥寺(小川賢人)

初めて観た映画のことはあまり覚えていないが、その日がすごく楽しかった事だけは今も覚えている。
『映画を愛する君へ』と監督からわたしたちに向けられたラブレターは、淡い記憶がプレイバックするにつれて「映画大好き私も!」に、とめどない監督の想いに思わず笑ってしまった。
映画と現実の境目が曖昧だったかつての子どもは、大人になった今もスクリーンの向こう側に夢を見続けている。

▼幼少期に影響を受けた映画
『ジュブナイル』(00)

東京日仏学院エスパス・イマージュ(映画主任/映画批評、坂本安美)

デプレシャン監督は20年もの間、この劇場に何度もお迎えし、自分の映画について、あるいは他の監督の作品について、つねに映画への愛と、深い造詣に満ちた言葉を残してくれてきました。
私たちの上映活動はそうしてデプレシャン監督に見守られ、刺激を受けて続いてきました。
『映画を愛する君へ』にこの劇場が映る瞬間、そうした歴史がそこに集約されているようで感動しました!

▼幼少期に影響を受けた映画
『シャーキーズ・マシーン』(81)

国立映画アーカイブ(主任研究員 岡田秀則)

たくさんの映画が引用されているが、決して「映画史上の名作」を押しつけてきたりはしない。
映画との出会い方、関係の深まり方はひとりひとり違い、すべての人にそれぞれの「映画の歴史」がある。
この映画は、そのことにとことん誠実であろうとしたデプレシャンの優しさの結晶だ。

▼幼少期に影響を受けた映画
『ひまわり』(70)

新文芸坐(花俟良王)

偉大なるスピルバーグの模倣になることなく、ましてや安易なドキュメンタリーになることもない。
映画作家として己のリズムと温度で、映画への愛と感謝、そしてその存在意義をも表明する。
デプレシャンにしか書けない、幸福な不意打ちに彩られた孤高のラブレターだ。

▼幼少期に影響を受けた映画
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)

シネマテークたかさき(小林栄子)

映画を観る手段が多様化する中で「映画館で映画を観ること」とは何か?を問い直しています。
デプレシャン監督の映画体験と記憶には、この問いへのアンサーがありました。

▼幼少期に影響を受けた映画
『ふたり』(91)

フォーラム福島(阿部泰宏)

シネフィル(映画狂)はとことん、映画愛でできている。映画に魅入られた少年は、映画で人生や価値観を学び、やがて映画作家アルノー・デプレシャンとなった。これはデプレシャンが数々の映画の場面を引用しつつ、ポールという少年を自らの分身に見立て、11章のテーマで映画への尽きせぬオマージュを捧げたドキュドラマだ。
また、スクリーンに現実が映し出されるそのときに何が起こるのか。その謎を終生探り続ける、というデプレシャンの声が響くとき、映画を観たり考えたりすることがこのうえなく価値的に思え、誇らしくもなる。
デプレシャンは世界中の映画ファンに、映画がいかに人生に不可欠なものかを真正面から示してみせた。

▼幼少期に影響を受けた映画
『サイコ』(60)

キネマ旬報シアター(番組編成担当 渡邉隆介)

どこでも映画が見られるようになったいま、どこでもない闇の中で光の反映を受け止める映画/映画館体験の秘かな愉しみを穏やかに肯定してくれる、優しい、深く染み入るような映画でした。

▼幼少期に影響を受けた映画
『風立ちぬ』(13)

伏見ミリオン座(インシアター担当 乗池翔太)

“映画”と“映画鑑賞”にまつわるエトセトラが、ドラマやドキュメンタリー、インタビューなど様々な手法で表現されていました。
体系的にみえる構成でも、監督アルノー・デプレシャンの人生と愛を感じ、とても温かみのある映画でした。
どうしようもない自分を好きになりたくて、僕は今日もせっせと映画を観ているのかもしれません。

▼幼少期に影響を受けた映画
『ザ・マジック・アワー』(08)

テアトル梅田(営業係 瀧川佳典)

11歳の時、大阪の叔母さんに連れられ三番街シネマで観た『ベンジー』。
高校1年生(15歳)の時に梅田東映で観て「いつかジャズとクラシックが判る大人になりたい」と思い、以来45年間オールタイムベストワンの『野獣死すべし』。
上京した18歳の時、何度も観て訳詞風の詩まで書くほど感化された『戦場のメリークリスマス』。
27歳の時にデートで観て、その芸術性と作品のクオリティーの高さに感動したディズニーアニメ『美女と野獣』。
30歳の時、働き始めた旧テアトル梅田(梅田ロフト地下)で観てミニシアター作品の面白さを理解出来た『他人のそら似』。
始発を待つ深夜の天六ホクテンザで観て、そこから一週間呪い死の恐怖に怯え続けた『リング』。
結婚後、主人公マルコムを我が身に置き換えて帰りの電車の中でずっと涙が止まらなかった『シックス・センス』。
初めて映画館に行ってからほぼ半世紀、たくさんの映画館で色んな映画を観てきました。
笑って泣いて憤って心打たれて。そして30年間映画館で働きながら「映画」って何だろう、テレビやPC、スマホで観ることが出来る現在、「映画館」で観る意義とは何だろうとずっと考えてきました。
本作『映画を愛する君へ』の中にその答え(またはヒント)を見つけたような気がします。

▼幼少期に影響を受けた映画
『禁じられた遊び』(52)、『影の車』(70)、『X線の眼を持つ男』(63)、『ハエ男の恐怖』(58)

シネ・ヌーヴォ(山崎紀子)

2023年の大きな出来事。アルノー・デプレシャン監督がシネ・ヌーヴォにトークに来てくれたこと。
翌朝に再びカメラを持ってやってきたこと。
「観客」の映画を作っている、と言ったその映画にちゃっかりと映ったシネ・ヌーヴォを発見し、私はシネ・ヌーヴォに来てくれる映画を愛するお客さんの何人もの顔を思い浮かべました。
シネ・ヌーヴォで上映してきた数々の映画、それらが自分にとっても、お客さんたちにとっても人生の一部であると感じて、暖かな気持ちになりました。

▼幼少期に影響を受けた映画
『蒲田行進曲』(82)

京都シネマ(スタッフ)

映画哲学や映画論という点で観ても感銘を受けるし、自分の人生につねにそばにあった「映画とわたし」という映画の語り口が、 とても親密なラブレターとして差し出されているようで、夢中にさせられます。
映画に触れて輝いた自分の人生にも思いを馳せてしまい、受け取ったラブレターの返事を出したい気持ちに駆られました。

▼幼少期に影響を受けた映画
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)

漁港口の映画館 シネマポスト(支配人 鴻池和彦)

人生の羅針盤に何を据えるのかは人それぞれと思います。
時間を経て今の年齢に来た時に変わらない存在として、
今だに奥深く解明できず、それでいて魅力に惹かれてやまず、
生きる糧であり教師でもあり続けている“映画”は
多くの誰かにとって人生の羅針盤そのものなんだと。
名匠・アルノー・デプレシャンも私たちと同じように、
初期衝動に忠実にそして人生を育まれ、
今も求道している良き旅人であることが伺い知れます。

▼幼少期に影響を受けた映画
『スネーキーモンキー 蛇拳』(76)

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