STORY
20世紀初頭のテキサス。青年ビル(リチャード・ギア)はシカゴでトラブルを起こし、妹のリンダ(リンダ・マンズ)、ビルの恋人アビー(ブルック・アダムス)とともに広大な麦畑に流れ着く。3人は裕福な地主のチャック(サム・シェパード)のために麦刈りの仕事をすることになった。秋が近づくころチャックは不治の病に侵されていることを医師から告げられる。麦刈りの時期が終わると労働者たちはそれぞれの故郷に帰ることになっていたが、チャックはアビーを見初め周囲の反対も聞かず結婚を申し込む。自分が身を引いた方がいいと悟ったビルは一人その地を去っていく。しかし翌年彼が再びテキサスに戻ってきたことからビル、チャック、アビーの3人は思わぬ展開を迎えた。
しかし、マジックアワーの撮影は決して容易ではない。
照度が極端に低いため、明るい空に露出が引っ張られ、地上の対象物はすべてシルエットになってしまう。そんな厳しい条件の中で、露出を巧みにコントロールし、淡い自然光を最大限に活かしながら、麦畑や人物のディテールを緻密に描き出している点は、見事としか言いようがない。撮影技術の高さも、この映画の大きな魅力の一つになっている。「眠ると夢の中で麦畑が話しかけてきた」という少女の言葉は、映像が持つ魔法を象徴しているのかもしれない。
「天国の日々」は、物語以上に、映像そのものが語る力を持っている。マジックアワーの色彩の輝きや雰囲気を巧みに伝える映像美を目にするだけでも、本作を観る価値は十分にあるだろう。