心理スリラーでありラブストーリー
重厚感ある傑作がここに誕生!

ヴェネチア国際映画祭で高く評価された前作『おもかげ』(19)で新たな才能として名を知らしめた新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督が、スペイン全土に激震が走った実際の事件をベースに映画化。名作『わらの犬』(71/サム・ペキンパー監督)でも描かれた“田舎と都会の対立”という題材を、人間の暗部に潜む独りよがりな思考、憎悪、凶暴性に深く迫り描き出す。観客はいつの間にかガリシアの村に引きずりこまれるような緊張感漂う心理スリラーを体験することになるだろう。また、女性の精神的な強さと揺るぎない愛の深さも大胆に描いており、計算しつくされた様々な対比、伏線、カメラワークが生かされた重厚感ある傑作がここに誕生した。

東京国際映画祭ほか世界各地で絶賛の嵐
大女優カトリーヌ・ドヌーヴも本作を高く評価!

第35回東京国際映画祭にて最優秀作品賞にあたる東京グランプリのほか、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞の主要3部門を獲得し「並はずれた傑作」と絶賛された話題作。同映画祭史上、東京グランプリと最優秀男優賞のダブル受賞をしたのは『最強のふたり』(11)以来の快挙となった。第37回ゴヤ賞で最優秀映画賞、最優秀監督賞など主要9部門受賞し、スペインで2022年に公開された独立映画の興行収入1位を獲得。その後も第48回セザール賞で最優秀外国映画賞をはじめ、世界で56もの賞を獲得(2023.8.25時点)するなど好評を博し、フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴは、“今年観た中で最も強烈な映画でした”と本作を高く評価した。

フランス人夫婦アントワーヌとオルガはスローライフに夢を抱き、緑豊かな山岳地帯スペイン・ガリシア地方の小さな村に移住する。しかし、ある出来事をきっかけに地元の村人たちと敵対関係が激化していき……。

ドゥニ・メノーシェ/アントワーヌ役

DENIS MÉNOCHET/ANTOINE

1976 年9 月18日フランス、ヴァル=ドワーズ生まれ。演技学校を卒業後、2003 年にTVドラマ「トレジャーハンター」(02-03)、「Caméra café」(01 ─ 07)に出演し俳優デビュー。その後、クエンティン・タランティーノ監督『イングロリアス・バスターズ』(09)への出演をきっかけに国内外からの注目を集める。グザヴィエ・ルグラン監督『ジュリアン』(17)では恐ろしいほど記憶に残る暴力的な男に扮し、その演技力の高さが評価される。本作『理想郷』(22)でも第35回東京国際映画祭で最優秀主演男優賞を、第37回ゴヤ賞にて主演男優賞を受賞したほか世界中の映画祭が絶賛。2023 年に開催された第76回カンヌ国際映画祭では審査員を務めるなど、今フランスでもっとも期待されている俳優である。

主な出演作・・・・・・『ハンニバル・ライジング』(07/ピーター・ウェバー監督)、『エディット・ピアフ ~愛の讃歌~』(07/ オリヴィエ・ダアン監督)、『イングロリアス・バスターズ』(09/クエンティン・タランティーノ監督)、『危険なプロット』(12/フランソワ・オゾン監督)、『グランド・セントラル』(13/レベッカ・ズロトヴスキ監督)、『アサシン クリード』(16/ジャスティン・カーゼル監督)、『ジュリアン』(17/グザヴィエ・ルグラン監督)、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(18/フランソワ・オゾン監督)、『悪なき殺人』(19/ドミニク・モル監督)、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(21/ウェス・アンダーソン監督)、『苦い涙』(22/フランソワ・オゾン監督)、『理想郷』(22/ロドリゴ・ソロゴイェン監督)、『Beau Is Afraid』(23/アリ・アスター監督)

マリナ・フォイス/オルガ役

MARINA FOÏS/OLGA

1970 年1 月21日フランス、ブローニュ=ビヤンクール生まれ。幼少期からコメディに興味を持ち7 歳から演技のレッスンを始める。俳優ジェラール・ジュニョが監督を務めた『Casque Bleu』(94)で長編映画スクリーンデビュー。1996 年にコメディ集団The Royal Imperial Green Rabit Company に参加。同グループはのちにLes Robins des Bois に改名し、舞台を中心に活躍。Les Robins des Bois の成功に後押しされ、数々のTVや映画でコメディエンヌとして活躍する。2022 年~23 年にかけて、『ヴィーガンズ・ハム』(21)、『シャーク・ド・フランス』(22)、『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』(22)、そして『理想郷』(22)と、出演作が相次いで日本公開を迎えている今注目すべき俳優。

主な出演作・・・・・・『バレッツ』(10/リシャール・ベリ監督)、『パリ警視庁:未成年保護部隊』(11/ マイウェン監督)、『間奏曲はパリで』(14/ マルク・フィトゥシ監督)、『欲しがる女』(16/ セバスチャン・マルニエ監督)、『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(18/ジル・ルルーシュ監督)、『私は確信する』(18/ アントワーヌ・ランボー監督)、『ヴィーガンズ・ハム』(21/ファブリス・エブエ監督)、『理想郷』(22/ロドリゴ・ソロゴイェン監督)、『シャーク・ド・フランス』(22/ ルドヴィック&ゾラン・ブケルマ監督)、『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』(22/ジャン=ポール・サロメ監督)

ロドリゴ・ソロゴイェン/監督・脚本

RODRIGO SOROGOYEN

1981 年9 月16日スペイン、マドリード生まれ。マドリード映画撮影・視聴覚学校(ECAM)で脚本を学び、2005 年よりTVドラマシリーズの脚本や監督を手掛けることでキャリアをスタートさせる。長編映画監督デビューは共同監督を務めた『8 citas』(08)。2011 年に自らの制作会社カバージョ・フィルムズを立ち上げ、自主制作で『Stockholm』(13)を撮り、多数の映画賞を受賞するなど成功を収める。その後、『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』(16)が第31回ゴヤ賞で6 部門ノミネート。スパニッシュ・ミステリーの衝撃作として注目を浴びる。翌年、約19 分の短編映画『Madre』(17)が第91回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネート。『El Reino』(18)で第33回ゴヤ賞の監督賞に輝き、今日のスペインにおける著名な映画監督の地位を確固たるものにする。大成功を収めた短編映画『Madre』を長編映画化した『おもかげ』(19)は、第76回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で女優賞を受賞。第34回ゴヤ賞で女優賞など3 部門にノミネートされた。『理想郷』の後は、チチョ・イバニェス・セラドール監督が手掛けたTVシリーズ「Historias para no dormir」のリメイク版で4 エピソードの内のひとつである「El Doble」を制作。その他に、スペインの配信チャンネル「モ ビスタープラス」のドラマシリーズ「Apagón」(22)のエピソード「Negación」がある。

主な監督作
『8 citas』(08)
『Stockholm』(13)
『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』(16)
『Madre』(17)〈短編〉
『El Reino』(18)
『おもかげ』(19)
『理想郷』(22)

森達也(映画監督・作家)

不穏な光と音。そして複数の視線。中盤で定石を外すストーリー。そして女性の強さ。観終えて余韻に浸り続けている。

斎藤工(俳優・映画監督)

去年の映画祭にて偶発的に出逢った本作は
あまりにも他を逸する圧巻な悪魔的なエネルギーを客席に放ち
それが未だに内臓に残り続け一年経った今なお消化出来ずにいる

スペイン北部ガリシアの山村を舞台に
個々の正義・集団心理・同調圧力・地域貧困・地方の過疎化…
人間と言う種族の根幹的な醜悪さや執着故のある種の美しさが何重層にもなって襲って来るが
それは果たして遠くの出来事・物語なのだろうか
混沌とした現代を生きる我々が最も対峙すべき作品の一つと言い切れる

筒井真理子(俳優)

暴力と理性、移住者と地元住民、男性と女性、さまざまな対立の軋みから生まれる憎悪。 ロドリゴ・ソロゴイェン監督のまなざしは人間の深部を掘り、底知れぬ恐ろしさを浮かび上がらせる。技巧は微塵も感じさせないのに緻密で巧みに配置された脚本と演出、卓越した演技に満ちている。俳優たちの見事な演技に触れることができて幸せな時間だった。そして、そのすべてを凌駕するかのようなラスト。生きるということをもう一度考えさせられる傑作。

黒沢あすか(俳優)

"よそ者"と言われ、苦渋の日々を送るアントワーヌ・オルガ夫妻。
都会からの新参者へ注がれる視線は粘り気があり執拗に絡みつく。
『住めば都』という言葉もあるが、それは交流が成立してこそ意味を成すもの。
『郷に入れば郷に従え』を暗に主張してくる者との対話は万策尽きる時を迎える。
人の思考も"発酵と熟成"を繰り返し育てていかなければならない。
ひと匙の愛、誰かが彼らの頭上に振りかけてくれていたらと思わずにはいられなかった。

岩井志麻子(作家)

私は子どもの頃から、漠然と理想郷というのを怖い場所だと思っていた。私が私でなくなりそうだから。という理由が、この映画で初めてわかった。

小島秀夫(ゲームクリエイター)

強烈なパンチと衝撃を喰らった。痛みとも、哀しみとも体感の違う、未体験のボディ・ブローを。このエンディングは、終演後も観客を映画からは逃してはくれない。ミステリーの“理想”からは大きく外れた結末に、取り返しのつかない“理想郷”の迷宮へと、いつまでも幽閉される。

小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)

自然を愛する夫婦の、夢のような移住生活。ただひとつ、最悪の隣人を除いては。圧倒的に分かり合えない!善意も正義も常識も、すべてが覆る虚しさ。分断が深まる現代社会の、縮図のような映画だった。共感や感動がもてはやされる世の中で、この不穏極まりない作品を作りきった人々の野心にグッと来た。

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