劇場情報
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私の我慢は、限界を越えた。
キティ・グリーンxジュリア・ガーナー 『アシスタント』監督&主演 最新作
女性の悪夢を描く、新感覚フェミニスト・スリラー ロイヤルホテルという名のパブ。そこでのアルバイトは恐怖の連続だった
映画『ロイヤルホテル』
7.26 Roadshow
監督・脚本:キティ・グリーン 出演:ジュリア・ガーナー  ジェシカ・ヘンウィック  トビー・ウォレス  ヒューゴ・ウィーヴィング  ハーバート・ノードラム 2023年|オーストラリア|91分|2.39:1|原題:The Royal Hotel|カラー|5.1ch|字幕:田沼令子|配給:アンプラグド G

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『燃ゆる女の肖像』『パラサイト 半地下の家族』『わたしは最悪。』など次々に話題作を公開しているNEON配給作品
                      女性の決意を示す、新時代のエンディング
                      挑発的なラストに議論が起きるようにしたかった──── キティ・グリーン(監督)

Introduction

オーストラリアの荒れ果てた田舎にひっそりと佇むロイヤルホテルという名の寂れたパブ。

2016年に『HotelCoolgardie』(原題)としてドキュメンタリー映画化されたオーストラリア西部に実在する店がモデル。フィンランドの女性バックパッカー2人が住み込みで働く中でハラスメントを受ける様を記録したドキュメンタリーだが、キティ・グリーン監督は審査員を務めたある映画祭でこの映画を目にしてインスピレーションを受けた。『アシスタント』(19)の主演ジュリア・ガーナーや制作スタッフと再びタッグを組んで作り上げた長編劇映画の第2弾。グリーン監督は「前作『アシスタント』は腐ったシステムを受け入れざるを得ない環境がテーマでした。今回の作品は、最後の瞬間にもっと視点を入れたかったのです。そのような行動をすべて提示し、受け入れられないというメッセージを伝えています」と語る。

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この仕事、最悪

Story

ハンナ(ジュリア・ガーナー)とリブ(ジェシカ・ヘンウィック)の親友2人。
旅行で訪れたオーストラリアでお金に困り、
荒れ果てた田舎にある古いパブ「ロイヤルホテル」に滞在し、
バーテンダーとしてワーキング・ホリデーをすることに。

単なる接客バイトかと思いきや、彼女たちを待ち受けていたのは、
飲んだくれの店長や荒々しい客たちが起こす
パワハラやセクハラ、女性差別の連続だった。

楽観的なリブは次第に店に溶け込んでいくが、
真面目なハンナは孤立し精神的に追い込まれ、
2人の友情は徐々に崩壊していく……。

Cast

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Julia Garner
ジュリア・ガーナー/ハンナ役

1994年、アメリカ・ニューヨーク出身の俳優。今最も注目を集める若手俳優の一人。15歳から演技を始め、『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(11)で映画デビュー。『エレクトリック・チルドレン』(12)にて初主演を果たす。Netflixオリジナルドラマシリーズ「オザークへようこそ」(17─22)に出演し、第80回ゴールデングローブ賞の最優秀助演女優賞(ドラマ部門)を受賞。さらに、第71、72、74回プライムタイム・エミー賞 助演女優賞を受賞した。映画会社でハラスメントを受ける新人アシスタントを演じた『アシスタント』(19)でキティ・グリーンと初のタッグを組んでおり、『ロイヤルホテル』では2回目。2025年にアメリカで公開予定のマーベル作品『The Fantastic Four(原題)』への出演も決まっている。 主な出演作は『ウォールフラワー』(12)、『肉』(13)、『シン・シティ 復讐の女神』(14)、『愛しのグランマ』(15)、『真夏の体温』(17)など。劇場公開映画以外では、HBO「GIRLS/ガールズ」(12─17)、FXチャンネル「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」(13─18)、Netflix「ゲットダウン」(16─17)、パラマウント・ネットワーク 「Waco(原題)」(18)、Bravo「ダーティ・ジョン -秘密と嘘-」(18─20)などがある。

「監督の『アシスタント』に出演した経験から、傑作になると確信していました。監督とタッグが組めることがうれしくて、すぐに返事をしました。彼女と私はテレパシーのようにお互いを理解しています。舞台であるロイヤルホテルというパブは、ストレスがたまる環境です。女性もいるので、男だけが問題ではありません。しかし、有害なパブ文化があります。アルコールの存在が、このパブの文化に大きな影響を与え、人の精神を蝕んでいきます」 ──本作を3語で表すと? 「波乱に満ち、先が読めず、脳裏に焼き付く」

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Jessica Henwick
ジェシカ・ヘンウィック/リブ役

1992年、イングランド・サリー出身の俳優。イギリス人の父とシンガポール人の母の間に生まれる。2009年に『聖トリニアンズ女学院2』(日本劇場未公開)で映画デビュー。2010年に、英BBCのファミリー番組「Spirit Warriors(原題)」で東アジア系俳優初の主演を演じた。2015年には、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でジェス・テストール役として出演。同年、HBOで放送された大ヒットTVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」(11─19)のシーズン5から出演し、一躍知名度を上げた。 そのほかの主な出演作は『私とあなたのオープンな関係』(17)、『アンダーウォーター』(20)、『マトリックス レザレクションズ』(21)、『グレイマン』(22)、『ナイブス・アウト:グラス・オニオン』(22)など。

「ドキュメンタリー版の大ファンで、映画化の話を聞いてすぐに興味を持ちました。リブは現地の人たちと交流して、そこでの生活を満喫したいと思っています。彼女が追い求めているのは真のオーストラリア体験で、自国の生活からの逃避でもあります。リブはオーストラリア人のユーモアを楽しんでいますが、ハンナには受け入れがたいという違いがあります。本作を観る人たちは、物語にある社会的なテーマに驚くと思います。脚本を読んで受ける印象とは裏腹に、善人と悪人を明確に区別することはできません。そこが意外だと思います」 ──本作を3語で表すと? 「スリル満点、現実的で、笑える作品」

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Hugo Weaving
ヒューゴ・ウィーヴィング/ビリー役

1960年、ナイジェリア出身の俳優。1981年に、オーストラリア国立演劇学院を卒業し、様々な作品への出演を重ね、『Proof(原題)』(91)、『The Interview(原題)』(98)でオーストラリア映画協会賞 主演男優賞を受賞した。声優としても活躍しており、『ベイブ』シリーズ、『ハッピー フィート』シリーズ、『トランスフォーマー』シリーズなどにも出演。『プリシラ』(94)のミッチ役や、『マトリックス』シリーズのエージェント・スミス役、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズと『ホビット』シリーズのエルロンド役、『V フォー・ヴェンデッタ』(05)のV役など多くの人たちに親しまれる象徴的な役を演じ、国際的に知られるようになる。その他の主な出演作は、『ガフールの伝説』(10)、『オレンジと太陽』(10)、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11)、『クラウドアトラス』(12)、『ハクソー・リッジ』(16)、『移動都市/モータル・エンジン』(18)など。

「ロイヤルホテルは、ビリーが経営する前は彼の父親、その前は祖父が経営していました。店を引き継いだビリーは典型的な3代目ですね。父親の後を継いだビリーはうまく経営できず借金を抱え、アルコール依存症です。昔、常連だったような客はロイヤルホテルにいません。寄り集まっていた炭鉱作業員が来ないのです。ビリーは店を経営しながらも、自分の人生を管理できないという、この物語を象徴する人物です。彼が店で雇うのは、ヨーロッパやアメリカから来た若い女性。店員は6~8週間で入れ替わるため、店を宣伝する機会として利用しています。新たな女性が来れば、客が集まるからですね」 ──本作を3語で表すと? 「女性視点の映画『荒野の千鳥足』」

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Toby Wallace
トビー・ウォレス/マティ役

1995年、イギリス・ロンドン出身の俳優。『Lucky Country(原題)』(09)で映画デビューを果たす。『ベイビーティース』(19)での役で知られ、第76回ヴェネチア国際映画祭にてマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)、第10回オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)賞で主演男優賞を受賞。最近では、トム・ハーディ、オースティン・バトラー、マイケル・シャノン出演の『The Bikeriders(原題)』(23)に出演。その他の主な出演作は『シークレット・オブ・ハロウィン』(16)など。

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Herbert Nordrum
ハーバート・ノードラム/トルステン役

1987年、ノルウェー出身の俳優。『Pornopung(原題)』(13)でノルウェー最大の映画賞、第30回アマンダ賞にて最優秀助演男優賞を受賞。さらに、『Fjols til fjells(原題)』(20)では第36回アマンダ賞 主演俳優賞にノミネート。第72回カンヌ国際映画祭でプレミア上映された『わたしは最悪』(21)では、再び第38回アマンダ賞 助演男優賞にノミネートされた。ノルウェーを代表する俳優のひとり。

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Daniel Henshall
ダニエル・ヘンシュオール/ドリー役

1982年、オーストラリア・シドニー出身の俳優、作家。ジャスティン・カーゼル監督の『スノータウン』(11)で実在の連続殺人鬼ジョン・バンディングを演じ、第2回オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)賞にて主演男優賞を受賞。ポン・ジュノ監督の最新作『Mickey 17』(25)に出演している。そのほか『ファイナル・アワーズ』(13)、『ババドック 暗闇の魔物』(14)、『オクジャ okja』(17)、『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17)、『SKIN/スキン』(18)など。

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James Frecheville
ジェームズ・フレッシュヴィル/ティース役

1991年、オーストラリア・メルボルン出身の俳優、プロデューサー。主な出演作は『アニマル・キングダム』(10)、『ファースト・タイム 素敵な恋の始め方』(12)、『美しい絵の崩壊』(13)、『クライム・ヒート』(14)、『プリズン・エクスペリメント』(15)、『サイバー・リベンジャー』(16)、『リベンジャー・スクワッド 宿命の荒野』(18)、『渇きと偽り』(20)など。

Director

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kitty green
キティ・グリーン/監督・脚本

1984年、オーストラリア・メルボルン出身の映画監督、脚本家。メルボルンのビクトリア芸術大学で映画制作を学び、卒業後はABCで編集者兼プロデューサーとして働く。2013年、ウクライナのフェミニズム抗議団体「FEMEN」に焦点を当てたドキュメンタリー『Ukraine Is Not a Brothel(原題)』でデビュー。第70回ヴェネチア国際映画祭のほか、世界50以上の映画祭で上映された。第5回オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)賞にて最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞。2015年、短編ドキュメンタリー『The Face of Ukraine: Casting Oksana Baiul(原題)』では、第31回サンダンス映画祭で短編映画審査員賞を受賞。2017年、Netflixオリジナルのドキュメンタリー作品『ジョンベネ殺害事件の謎』を手掛け、第33回サンダンス映画祭、第67回ベルリン国際映画祭でプレミア上映された後、第7回AACTA賞にて最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞した。 2017年に巻き起こった#Me Too運動に自身初の劇映画の題材を見出し、職場におけるハラスメント問題を題材にした『アシスタント』(19)で初の劇映画作品を作り上げた。そして、『ロイヤルホテル』では第71回サン・セバスティアン国際映画祭で最優秀作品賞にノミネートされ、RTVE-Otra Mirada賞を受賞。2018年、サンダンス・インスティテュートのノンフィクション芸術部門のフェローシップに選ばれている。

Comment

イラスト
AYUMI TAKAHASHI
イラストレーター・クリエーティブディレクター

世の中の縮図のような映画でした。
優しい人が我慢をし、平気で傷つけてくる人がいる。
誰も守ってはくれないし、守られたいわけでもない。
自分自身で警戒心と誇りを持って生きていかないと、簡単に壊されてしまう世の中。
現実は残酷だけど、自分で選択することは出来るはず。
自分の意思をどれだけ持って生きるかが大切なのだと思います。

松本穂香
俳優

対照的な2人の女性が無秩序の『ロイヤルホテル』という
閉鎖的な空間の中で徐々に崩壊していく様子が生々しく、衝撃的。
ただ、いわゆるスリラー映画ではない、
我慢の先にある正義が導く結末に彼女たちの強さを感じました。

井桁弘恵
俳優・モデル

彼女たちを、あまり怒らせない方がいい。貧困、性差、異邦人……。
あらゆる面で弱い立場にある彼女たちの、
うんざりするような日々のなかで、とんでもない底力を見てしまった。
女ふたり、バディものの問題作。

小川紗良
文筆家・映像作家・俳優

ハラスメントとはなんなのか。
その全てが詰まった本作は、出口の見えないサイコサスペンスのよう。
緊張が続く状況下で、選択により運命が左右する命懸けの脱出ゲームを食い入るように見守った。
不快に感じるか否かで、自身の加害性が露わになる踏み絵的映画だ。

伊藤さとり
映画パーソナリティ

未来に希望をもって社会に飛び出していく若者たち。
だが、経験を積んだ女性ほど失望や、燃えるような怒りをおぼえるようになっていく……。
本作は、女性たちにとっての“現実”の日々を追体験させることで、
いったい“何”が彼女たちを蝕んだのか、その真相へと観客を導いてくれる。

小野寺系
映画評論家

若者たちが旅先で大変なトラブルに巻き込まれる…というスリラーはたくさんありますが、
この映画は今まで見た中でもそれを一番と言っていいくらいリアルに描いた作品だと思います。
『マッドマックス』シリーズみたいな映画がオーストラリアで作られる背景には何があるのか…
ということを女性の視点から描いた作品でもあります。

北村紗衣
英文学者

この映画は『テルマ&ルイーズ』を裏返して、もう一度裏返す。
二人が働くロイヤルホテルは、いまだに女性をモノ扱いする現代の職場の縮図。
そこからテルマとルイーズのように激走できない二人もまた、現代女性のリアルな姿。
だがそれで終わると思ったら大間違い。
前作『アシスタント』の結末を乗り越えて、二人が向かう未来は?

河野真太郎
ジェンダー研究・文化研究