『PERFECT DAYS』ヴィム・ヴェンダース監督作品『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』

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Introduction
戦後ドイツを代表する芸術家であり、ドイツの暗黒の歴史を主題とした作品群で知られるアンゼルム・キーファーの生涯と、その現在を追ったドキュメンタリー。監督は、『PERFECT DAYS』(23)で第76回カンヌ国際映画祭 主演俳優賞(役所広司)を受賞し、第96回アカデミー賞🄬国際長編映画賞にノミネートされたことも記憶に新しい、ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース。『パリ、テキサス』(84)、『ベルリン・天使の詩』(87)、『ミリオンダラー・ホテル』(00)などの劇映画だけでなく、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(11)、『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』(14)などドキュメンタリーも手掛け、世界各国から高い評価を受けてる。
アンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話などのテーマを、絵画、彫刻、建築など多彩な表現で壮大な世界を創造する、戦後ドイツを代表する芸術家。1991年、高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門を受賞。ヴェンダース監督と同じ、1945年生まれであり、初期の作品の中には、戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ナチス式の敬礼を揶揄する作品を作るなど“タブー”に挑戦する作家として美術界の反発を生みながらも注目を浴びる存在となった。1993年からは、フランスに拠点を移し、わらや生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作している。彼の作品に一貫しているのは戦後ドイツ、そして死に向き合ってきたことであり、“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けている。
制作期間には2年の歳月を費やし、3D&6Kで撮影。従来の3D映画のような飛び出すような仕掛けではなく、絵画や建築を、立体的で目の前に存在するかのような奥行きのある映像を再現し、ドキュメンタリー作品において新しい可能性を追求した。「先入観を捨てて、この衝撃的なビジュアルをただ楽しんでもらいたい」とヴェンダース監督は語る。キャストには、アンゼルム・キーファー本人の他、自身の青年期を息子のダニエル・キーファーが演じ、幼少期をヴェンダース監督の孫甥、アントン・ヴェンダースが務めている。本作は『PERFECT DAYS』が出品された第76回カンヌ国際映画祭で、ヴィム・ヴェンダース監督作品として2作同時にプレミア上映された。
Staff
Wim Wenders
ヴィム・ヴェンダース/監督
1945年8月14日生まれ、ドイツ・デュッセルドルフ出身の映画監督、写真家。1967年秋、ミュンヘン大学で映像制作を学び、1970年まで映画評論家として活動。1967年から、映画監督としてのキャリアをスタートさせ、1971年に『都市の夏』で長編映画監督デビューを果たす。『都会のアリス』(74)、『まわり道』(75)、『さすらい』(76)の「ロードムービー3部作」を監督したことで注目を集める。『さすらい』では第29回カンヌ国際映画祭 国際映画批評家連盟賞、第12回シカゴ国際映画祭 ゴールド・ヒューゴ賞を受賞。その後、ロードムービーからは一転し、パトリシア・ハイスミス原作のサスペンス映画『アメリカの友人』(77)を監督。それを観たフランシス・フォード・コッポラからの依頼を受け、『ハメット』(82)を監督する。しかし、コッポラと衝突し撮影は中断される。その間に撮影した『ことの次第』が第39回ヴェネチア国際映画祭にて金獅子賞を受賞した。1984年、『パリ、テキサス』で第37回カンヌ国際映画祭 パルム・ドールを受賞。翌1985年に敬愛する小津安二郎監督に捧げたドキュメンタリー作品『東京画』を手掛ける。1987年、『ベルリン・天使の詩』で第40回カンヌ国際映画祭 監督賞を受賞。その続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』(93)が第46回同映画祭で審査員グランプリを受賞。ドキュメンタリー作品にも定評があり、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)では第72回アカデミー賞® 長編ドキュメンタリー映画賞にノミネート。ほか、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(11)、『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』(14)が連続でアカデミー®長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされる。後者は第67回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で特別賞を受賞した。2015年、ベルリン国際映画祭で彼の生涯の功績をたたえ、金熊名誉賞が授与された。2022年、第33回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。2023年、役所広司主演の『PERFECT DAYS』が第96回アカデミー賞®で日本代表として国際長編映画賞ノミネート。第76回カンヌ国際映画祭 エキュメニカル審査員賞、第47回日本アカデミー賞では最優秀監督賞を受賞した。
■その他の主な監督作品
2000年
『ミリオンダラー・ホテル』   第50回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門(銀熊賞)受賞
2004年
『ランド・オブ・プレンティ』   第61回ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞 ノミネート
2005年
『アメリカ、家族のいる風景』   第58回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール ノミネート
2008年
『パレルモ・シューティング』   第61回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール ノミネート
2015年
『誰のせいでもない』
2017年
『世界の涯ての鼓動』
Cast
Anselm Kiefer
アンゼルム・キーファー
ドイツを代表する芸術家。ドイツの歴史、ナチス、戦争、リヒャルト・ワーグナー、ギリシャ神話、聖書などをテーマに、砂や藁、鉛などを用いた作品が特徴。フライブルク大学で法律を学ぶが、美術に転じ、1969年にカールスルー工芸術アカデミーに入学。1970年に、デュッセルドルフ芸術アカデミーで絵画を学び、ヨーゼフ・ボイスらに師事した。1969年にヨーロッパ各所でナチ式に敬礼する自身の姿を撮影した写真「占拠」を発表し物議を醸した。その後も、ナチスの無謀なイギリス侵略計画を取り上げた写真作品「あしか作戦」(75)を発表。戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ドイツの歴史上の記憶を掘り起こすことで、自らのアイデンティティと文化を探求した。1980年に開催された、第39回ヴェネチア・ビエンナーレ西ドイツ館での展示で国際的に注目を集める。この頃から、神話や宗教といった普遍的なテーマに移行し、巨大なキャンバスに草や藁などが塗り込められたものや、鉛のオブジェが貼り付けられるなど素材の物質性を強調した作品が多くなる。1993年にフランスのバルジャックに拠点を移し、現在も活動を続けている。ウルフ賞芸術部門(1990)、高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門(1999)、ドイツ出版協会平和賞(2008)を受賞。MoMA(ニューヨーク近代美術館)やメトロポリタン美術館、シカゴ美術館、アムステルダム国立美術館といった世界の名だたる美術館に作品が所蔵されている。
Anton Wenders
アントン・ヴェンダース
ヴィム・ヴェンダースの孫甥(兄弟姉妹の孫にあたる男性のことを指す)。本作では、アンゼルム・キーファーの幼少期を演じる。
Daniel Kiefer
ダニエル・キーファー
アンゼルム・キーファーの息子。本作では、本人の青年期を演じる。